【読書感想】香君1 西から来た少女 上橋菜穂子

読書

ブクログに投稿した感想をこのブログにも載せています。

私の本棚はこちら。良かったら寄って行ってください。

**********

冒頭から一気に引き込まれる。
素晴らしい壮大な世界。
上橋さんの知識と文才と、フィールドワークで培ってきたすべてのものをもってしてでないと書けないであろう物語。

初代「香君」がもたらしたという奇跡の稲「オアレ稲」によって繁栄を極めたウマール帝国。その属国である西カルタン藩王国のかつての藩王の孫である15歳の少女アイシャが物語の主人公。
アイシャには特殊な能力があり、植物や虫たちのコミュニケーションを「香りの声」のように嗅覚で感じることができる。

アイシャの祖父は民に恨まれ藩王という地位から失脚しており、それゆえにアイシャも弟のミルチャも追われる身であったが、その特殊な能力によってウマール帝国の視察官であるマシュウによって命を救われ、かくまわれることに。

アイシャの祖父が藩王から失脚した原因が「オアレ稲」であった。この「オアレ稲」はどんな土地でも育つというすごい作物であるが、なにやら危険性をはらんでいると考えたアイシャの祖父は自国に「オアレ稲」を植え付けることを拒み続け、結果、大規模な飢饉で多くの民を苦しめたという。

私たち読者は読み進めるうちにこの「オアレ稲」がどうやらこの壮大な物語のキーになりそうだと気づかされていく。

一方マシュウによって生活する場を与えられたアイシャは現「香君」であるオリエの近くで生活することになるが、オリエに自分と同じ特殊な能力がないことに気づいてしまう。活神であり、その能力でもって事象を予言するとされる「香君」に能力がないことに驚き戸惑うアイシャ。

・・・とにかく圧倒的な世界観でした。
アイシャたちの世界はエキゾチックなようで、「稲」という作物からもなんとなく懐かしさを感じるような、絶妙な世界。
そして、ウマール帝国の神話のような成り立ちから、政治的な策略、戦略、見通し。
カタカナの固有名詞や、歴史の流れがぱっと入ってこないポンコツな私の頭脳では追い付けない完璧な世界観でした。上橋さんの頭の中ってどうなってるんでしょう。

守り人シリーズや鹿の王でも圧倒されましたが、上橋さんには何度も圧倒させられるんだろうと確信しました。

読了したような書き方になりましたが、まだ「1」を読み終えた段階です。
続きが気になってしょうがないです。

**********

うり子
うり子

人間は食べないと生きていけない。民が増えてくれば、食糧確保のために、自然そのままでは追い付かず、人間の手を加えたりして本来の姿ではない自然に変化させていくことも必要なのでしょう。それが為政者にとって大切な役割であることも間違いないのでしょうが、それが後に引き起こすかもしれない危険性まで鑑みてなされないとどうなっていくのか・・・ひと一人の一生では見終えることがないような長い道のりを見ている気がします。

コメント

タイトルとURLをコピーしました