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本当に失礼な話、あまり期待していなかったので、これは期待以上に面白かったです。
夫を亡くした瞳と、再婚相手の健児、そして亡くなった夫の母静江。5つの連作短編集。それぞれのお話で語り手がこの3人の誰かに変わる。
健児と静江が妙にウマが合うというか、仲が良く、それを快く思わない瞳・・・
奇妙な人間関係における、それぞれの複雑な感情がとてもよく読者に伝わる作品だと思います。そもそもが人間関係も、個々の人間の感情も、どちらもとても複雑なもの。どちらにも、良いも悪いもない。でもどちらにも目をつぶって生きていけるわけでもない。登場人物がこうなった今の状況も、誰のせいでもないし、誰の感情が正しいとか間違っているとかない。それでも、それぞれがそれぞれに悩みに悩み、意図せず相手を傷つけてしまう。それが本当にうまく表現されていました。
著者の原田さん、脚本家でもあるんですね。プロフィールを見て納得。何も文章なんて書けない私が、なんとなく上からで申し訳ないんですが、「上手だな」と思いました。なんというか、セリフと感情の描写のバランスが良い。説明しすぎず、でも大事なことは伝わる文章で、そしてセリフも一人歩きしてないというか。構成もとてもうまいと思いました。
いい意味ですらすらとあっという間に読めました。「ん?どうゆうこと?」と立ち止まって読み直すことも嫌いじゃないけど、ここまですらすらと気持ちよく読めた小説が久しぶりだったのもあって、とても楽しめた読書でした。読了後に少し切ない気持ちになるのも良かった。この「少し」切ないがポイントです。「とても」切ないではダメなんです、本書は。
「なんかいい小説ないかな?」と思っている人に、ぜひ!!と薦めたい一冊です。
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最近、原田ひ香さんのお名前をよく目にするようになりました。要チェックや!カチカチカチカチ・・・(←彦一)
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