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「やられたー。」と思った。
ミステリーだとかSFだとかジャンル情報を事前に知っておかなかったからかもしれないけれど、読み終わったあと、知らなくてよかったと思った。知らなかったからこそ「やられた」感が強かった。
以下、ネタバレ含みます。
まず、文庫本のぶ厚さに恐れおののき(読書が趣味のくせに活字を追うのが苦手)、読みだして中盤ほどまで、なんかこう、この物語の核になるようなものが掴めずに、少し楽しくなくなってきていた。いや、核はきっと写真家の父なんだろうけど、でも、いやに大人びていてしっかりしているようで、かなり危なげない理帆子が、掴み切れずにいた。そこで、唐突に別所が現れ、理帆子と別所の会話はまさに「頭のいい人」同士の会話のようで、ちょっと卑屈になりかけ、ドラえもんも嫌いじゃないけど、そんなに心入れもないしなぁ、と、悶々としながら読んでいた。
「あれ、これ、辻村深月だよね?こんな感じでダラダラと終わっていくの?なんだ、辻村深月にもこういう作品があるのね」なんて、偉そうに思っていたら、やっぱり後半一気にさすが辻村深月だと思った。「やられたー」と思ったのは、まず、この点。最後は「さすが辻村深月」と思わせるところ。この人の、筆力、物語の構成、人物観察眼、このあたりに、結局今回も脱帽だった。
「やられたー」と思ったもう一点が、言わずもがな、別所の正体。ミステリーを読み慣れている人からすれば、驚かれるかもしれないけれど、あんなにも「ん?」とひっかかりを覚えるところがあったにも関わらず、あの時がくるまで正体がわからなかったという不甲斐なさ(笑)。すごく不甲斐ない。あ、SFだ。
まさしくSF(すこし不思議)な物語だった。そして、ドラえもんってSF(すごく深い)んだな、と思いました。ドラえもん、読んでみようかな・・・
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さすが辻村さん。という感じでした。私特に、辻村さんの人間観察力がすごいと思うのです。本作も端役でしたが、クラスメートの加世や立川が、すっごくうまく表現されていると思いました。こんな子たちがクラスにいるって容易に想像できますよね。すごいわぁ。
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