【読書感想】本日は、お日柄もよく 原田マハ

読書

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出だしは良かった。「言葉には力がある」、確かにそうだ。「スピーチライター」?、そんな職業があるのねぇ。と、とても期待が膨らんだものの、途中から、嫌な予感・・・

この本はもう何年も前に「読みたい本リスト」に入れていたにも関わらず、ずっと手に取る機会もなく、積極的に読もうともしていなかったところ、知人が貸してくれてラッキーとすぐに読み出した。

幼馴染の結婚式がきっかけでスピーチライターという職業を知り、関わっていくことになる主人公こと葉。こと葉がスピーチライター久遠久美の事務所に通うようになり、話が「政治的」になっていき、思っていた物語の内容と違ってきたので、少し驚いた。この「政治的な」話は、「スピーチ」というものの重要性を説くうえで必要であって、一時的に政治的な話にページを割いているのかな、それにしてはなんだか作者の政治的な考え、政党批判が表に出すぎてないかな、なんて思っていると、ガッツリ政治の話になった。

正直、苦手分野である。こんな歳で情けなく、恥ずかしいことでもあるが、政治にそんなに興味はない。(興味はないけれど、だからといって政治が先述した「嫌な予感」に直接つながったわけではないけれど)

それでも、人の心を動かすスピーチ、後世まで残る名スピーチがあることからもスピーチの重要性はすんなり納得できたし、スピーチライターという人がいて、政治や選挙に関わっているということ、それもちょっと関わっているというのではなく、選挙戦ならば状況を左右するほど関わっているということを知ったのは、単純に新鮮でおもしろかった。
今まで考えたことがなかっただけで、言われてみればスピーチをする方のプロではなく、スピーチ原稿を書き上げるプロやスピーチの仕方を伝授するプロがいたって何の不思議はないのに。

「政治かぁ、選挙かぁ」とブツクサ思っていた私も、選挙戦を追っているうちに、こと葉と同じように、
「選挙って、ちょっとおもしろいかもしれない。自分たちが動けば、世の中が変わるかもしれない。」
と思った。それだけでも、私としては大収穫。

ただ、こんなに人気で評判の高い作品について、こういってしまうのもなんだけど、私の中ではそこまで評価が高い小説ではなかった。ここが「嫌な予感」の根本原因。たくさんの人が「良かった」「感動した」「大切な一冊になった」と高評価をつけている作品に、自分があまり馴染めない悲しさというか。私ってどこか変なのかな、と一瞬思ってしまったり。

なんといったらいいのだろう、こと葉にとって全てがうまくいきすぎ、というのか、環境に恵まれすぎ、というのか。初っ端から、友人の結婚式の場だから偶然とはいえ、大企業の社長さんと話す機会があり、典型的な一般庶民の私からしたら「え?主人公もセレブ?」なんて浅い感想を持ってしまい、さらに祖母は高名な俳人で、家族ぐるみで付き合いのある幼馴染のお父さんは議員さん・・・会社では抜擢され、仕事のできるちょっといい男にプロジェクトチームに誘われ、スピーチライターの師匠についていくうちに野党党首にも新人なのに期待されるわ、ついには爽やかイケメンの幼馴染も立候補することになり、スピーチライターとしてサポートすることになるわ・・・ってどんだけトントンやねん!と。ひがみですかね、これは。フィクションだから、と言ってしまえばそれまでなんだけど、まぁ、現実味がなくて。

だからなのか、それとも私に原田マハ作品が(あまり)刺さらないからなのか、どっちなのかわからないけれど、感情があまり動かされなかった。こう、感情というものに表面があるとしたら、その表面を「感動しそうな場面」や「感動的な言葉たち」がスルスル~と滑っていっちゃう感じだった。私の感情の表面を滑っていっちゃうだけだから、私の感情は不動・・・そんな感じだった。

なにしろスピーチがそんなに響かなかった。

とはいえ、思わず涙ぐむ場面は2~3回あったのだけれど、全体的には「う~ん」というか・・・。「惜しい」というのも変なのだが、ちょっとそんな感じ。私がよっぽどひねくれているんだろうな(笑)前にもどこかで書いたけれど、小川糸さんの作品を読んだ後と同じような感覚がある。高評価なのに私には刺さらない。

あ、でも読んで損した、とかはないです。機会があれば喜んで原田マハさんの作品を読むだろうと思います。

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うり子
うり子

本をお返しするときに「おもしろかったやろ?」と先に言われてしまって、ちょっと「う、うん・・・」となってしまった。でもこうやって自分好みではない本や自分では選ばないような本を読むきっかけをもらえることがとても嬉しい!

少しずつ自分の読書の海を広く、深くしていきたい。

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