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死という重くなりがちなテーマながら、爽やかに読み終えることのできる物語だった。
主人公の雫は33歳という若さにして、病魔に侵され、最期を瀬戸内の島にある「ライオンの家」というホスピスで過ごすことにする。
「ライオンの家」では、入所してくる人をゲストとよび、日曜日にゲストがリクエストするおやつを振る舞ってくれる。ゲストがリクエストするおやつにはそれぞれの思い出があり、「ライオンの家」を取り仕切るマドンナによって、その思い出と共におやつが提供される。
雫は、島の穏やかな景色、瀬戸内の美しい海、「ライオンの家」での出会いと別れを、人生最期に堪能する。
これまでいくつか読んだ小川糸さんの作品は実はあまり私に刺さらなく、どれも他の人の評価が高いだけに「う~ん・・・なんか残念だぁ、私にはあまり合わない・・・」と思ってしまうことが多かったが、この作品は今まででは一番良かった。なんとも「上から目線」のように聞こえて申し訳ないけれど、「私にとっては」今まで読んだ小川糸作品の中で一番だったということ。
本屋大賞2位ということで、テレビドラマ化されたのには大いに納得。映像としてすごく映えそうだし、ストーリー的にもテレビドラマにピッタリな気がした。
評価が高いのは、やはり「死」をこうも爽やかに書ききったからだと思う。思わず涙してしまう場面がありつつも、決して泣かせるためだけのお話ではない。できるだけたくさんの人の最期がこんなふうだったらいいな、と思える。もしも今、死への恐怖に立ち向かっている人がいたとしたら、その恐怖をそっと和らげてくれるお話だった。
ただやはり、私にはどうしてもいくつかの場面で違和感があって、雫以外の登場人物にはそこまで感情移入できなかった。「じゃあ、どう書けばいいのか」と聞かれたら全然わからないのだけれど、うーん、なんでだろう、物語は美しく、ほどよく感動もできて、テーマ設定も舞台設定も多くの人が好みそうにうまく書かれているけれど、奥行きがないというか・・・
終盤にかけて少し冗長に思えてきたけど、タヒチ君とち立花とマフラーのラストシーンは美しかった。
あぁぁぁぁぁ、またまた皆さん高評価の作品を上から目線でレビューして申し訳ない・・・。好みの問題です!(←雑にしめた!)
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どうも、読む前から、「これも合わないんじゃないか、合わなかったらどうしよう、高評価なのに」と、先入観を持っている気がしなくもない。そしてやや斜め上から読んでいる感もある。もうちょっとフラットな気持ちで読むよう気を付けよう。
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