【読書感想】スーツケースの半分は 近藤史恵

読書

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私の本棚はこちら。良かったら寄って行ってください。

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タイトルに惹かれて図書館で借りてみました。もう何年も海外旅行に行けていない反動がこういうところで現れる(笑)
初読みの作家さんでした。
その表紙の可愛さから、私の読みたい本リストに「タルト・タタンの夢」がずっと入ったままなのですが、その作家さんだったとはなんとなくうれしい驚きでした。「タルト・タタンの夢」も早く読みたい。

本書はきれいなブルーのスーツケースが軸となって、つながりのある短編が9作収録されている。

1.スーツケースを衝動買いした真美。(旅先:ニューヨーク)
2.友人の英恵。(旅先:香港)
3.同じく友人のゆり香。(旅先:アブダビ)
4.またまた同じく友人の悠子。(旅先:パリ)

この4人は大学時代の友人同士、結婚している子もいれば、派遣社員として働いている子、フリーの仕事をしている子などそれぞれ。そして悩みもそれぞれ。あまり「女性だから」とか言いたくないけれど、言ってしまおう。妙齢の女性なら一度は悩むことがこの4人の誰かの悩みに見つかるのではないか。他人から見たら、それこそ色々と大変な思いをしている人から見れば、大したことないけれど、心の底でうじうじと留まっているような女性ならではの悩みに共感できた。

5.(確か)英恵のいとこで、パリで悠子とちょっとしたつながりができた栞(パリ在住)
6.獣医の優美(この話ではどこにも行かない。次の話でドイツへ)
7.優美の娘、春菜(ドイツに留学中)

栞と春菜の、一見他人から見たら「海外に住んでいる、留学している」という境遇から羨望のまなざしで見られそうな状況を、それぞれが悶々と悩んでいる様子がすごくリアリティがあってよかった。海外に住んだことも、留学したこともないけれど、「あぁ、なんかわかる。私もそんなふうに悩みそうだわ」と共感してしまった。やっぱり自分が属するところとか、はっきりと描けない将来像とかって人間を悩ませますね、結局。

8.前出の4人の女友達のうち3人での国内旅行

なんとここでスーツケースを作った職人さんに出会う!!

そして、

9.スーツケースの最初の持ち主で優美と春菜の親類にあたる加奈子

加奈子の話はこれまでと一線を引いて全く別物の感じがした。不思議な魅力を持ちながら、なんだかとっつきにくい人に思える加奈子も、自分の弟の不義理が原因で別れた優美と春菜を、親戚としては縁が切れた後も見守っていた様子を前の話でわかっているので、加奈子の存在そのものが温かかった。

4話まででこの軸となっているスーツケースが「幸運を呼ぶスーツケース」と呼ばれ、友人間で貸し借りされ、本作をつなぐ大事なものだとわかるが、元の持ち主に返ったときには「おぉ」と心が跳ね、さらに先が気になりだした。そして最後の短編でこのスーツケースがどこからどうやってみんなの元にやってくることになるのか、スッキリとつながる。

短編がつながる様子が最近よく読む青山美智子さんに似ていた。どれも最後は良い方向に進む短編だが、途中少しびっくりというか少し重めの出来事も挟まっていたりして単調でなくてよかったのかもしれない。どの話もどの主人公も「特に好き」とはならなかったけれど、読了後は穏やかであたたかい気持ちになれます。

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うり子
うり子

初めて出会う作家さんの本を読むというのも、わくわくして良いものですね。私にとって読書が大好きな娯楽だと感じる瞬間です。

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