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またまた青山道子さんの作品を借りたので。青山作品は気づけばこれで5冊目くらいになるかな。
正直、また似た感じだな、もういいかな、ちょっと飽きたかな、なんて思うものの、そうでもない。どなたかがレビューに書いておられ、「ホント、それ」と思ったのが、飽きる飽きないの微妙で絶妙なところなんです。結局読んで損はないどころか、やはり温かい気持ちになれること間違いなしと安心して読めるし、実際読後には爽やかなものさえ感じるから、飽きたかも、と思っても読んでしまう。
今回の主人公たちの「気づき」のきっかけ、彼らが前向きになっていくきっかけとなるのは神社の猫。宮司さんから「ミクジ」と呼ばれるその猫は、悩める登場人物たちの前にタラヨウの葉をはらりと落としていく。そこには文字が書かれていて、その文字はどうやらミクジから葉をもらった本人しか見えないらしい。タラヨウの葉については、恥ずかしながら初めて知った。(思い返してみれば、小さいころ葉っぱに文字を書いて遊んだ記憶がかすかに蘇ってきて、それがタラヨウだったのかも、なんて思いましたが)
さて、タラヨウの葉に書かれた文字を不信に思う主人公たちですが、すぐにその言葉が自分の周りに顔を出すようになり、「こ、これは!」となるわけです。
そこから悩める子羊たちが前向きになっていく姿は読んでいて気持ちがいい。きっかけが何であっても、自分の中で何かを変えよう、現状を打破しようとする姿勢が、気負いなく書かれているのはこれまで読んできた青山作品に共通するところで、人気のゆえんなのだと思う。そして、それぞれの短編、もしくは他の作品で出てきた登場人物のゆるいつながりがこれまた絶妙。実は私たちが知らないところで、現実にもこんなゆるいつながりがあるのかもと思うと、日常も小説になりそう、なんてわくわく思ってしまいます。
一枚目 ニシムキ 失恋した美容師
二枚目 チケット 年頃の娘との関係に悩む中年
三枚目 ポイント 就活に苦戦中の大学生
四枚目 タネマキ 嫁と孫と暮らすお年寄り
五枚目 マンナカ 苔が好きな小学生
六枚目 スペース 漫画家になるという夢をあきらめきれない主婦
七枚目 タマタマ 占い師として活躍している女性
ここだけの話 宮司さんの語り
「マンナカ」が良かった。これはすごく好きになった。まずさゆりちゃんが出てくる!あの「お探し物は図書室まで」のさゆりちゃんが。さゆりちゃんがまだ養護教員をしていた頃のよう。そして、和也のこの言葉。「心が病んでるって、一生懸命な人のことを笑ったり、誰かが大切にしているものを平気で踏みにじったりすることだと思うんだ。」あぁぁぁぁぁ、なんて素直で直球ド真ん中の言葉。こういう純粋さ、好きです。ポ。
その次の「スペース」も良かったな。これには「木曜日にはココアを」(だったかな、たぶん)の輝也パパが出てきます。
これまでもそうだったけど、何か「好き」がある人が出てくることが多い。これといった趣味もなく、特別「好き」と思うものもない私にとっては羨ましく、まぶしい。
最後の宮司さんの話はなくても良かった気がするかな。それぞれのその後なんかは、ふんわりとした感じで終わらせてもらった方が想像力が広がる。ただ、宮司さんにも登場してもらいたかったという気持ちはわかる気がする。
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このブログへの投稿は2024年になってからになってしまいましたが、これが2023年最後にできたレビューでした。ブクログの記録によると2023年は73冊に対して感想を書いたよう。あまり数字は気にしませんが、それでも、こんなに読めたんだな、という思いと、やっぱり読書は楽しい!、という思いがあります。
2024年も読書感想の投稿が主となると思いますが、読んでくれている方がおられましたら、どうぞよろしくお願いいたします♪
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