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中学生に向けて行った講座を書籍にしたもの。と思いながら読んだのだけれど、講座を行ったわけではなく、講座調に書かれた本なのかも。そして、この書籍全体がどこかで無料で読めるらしい。それはそうと、とても良い本でした。図書館で待って待って待って借りたのですが、子どもたちが中学生になったら、そっと差し出そうかと思ったり、私もまた読み返すだろうと思ったりで、購入することにしました!
著者の坂口さんは、娘さんからテスト勉強に対するアドバイスを求められた。それに対して坂口さんは、どうアドバイスしたか。それが、タイトルにある「段取り」。つまり、勉強すべき全体量を把握して、全体を網羅する勉強スケジュールを立てて、それを実行する(守る)ということ。本書では、テスト勉強へのアドバイスとしてはそれだけしか言っていない。この「段取り」がどういうものかをふむふむと読んでいく中で、これも需要だと感じたことは、「目に見えるかたちにする」ということ。つまり書き出すということ。頭の中で考えただけのことは想像の域を出ないと。これには強く共感した。
坂口さんははっきり言う。テストの内容は大事ではない、と。テスト勉強で段取りする力を身に着けることこそが大事だと。「段取り」は将来、自分の人生を生きていくにも必要な力で、自立する力になると。
学校では「段取り」を全く教えてくれないのに、社会に出たら、「はい、段取り良く仕事してね」と会社で要求され、そこに対応できない人も多いと。これはまさに真実をついてると思った。いい大学を出ていても仕事ができない新入社員がいたとして、彼(彼女)は、「段取り」を自分でしたことがないのかもしれない。ここに日本の教育の穴がある。日本の教育は「段取り」を先生がしてくれるから。
中学生へ、テスト勉強は「段取り」を身に着ける良い訓練と思って、それはそれでがんばりましょう、と呼びかけ、内容的に第2章へうつる。話題はもっとスケールが大きく、人生のこととなる。なぜ、日本では学校でお金のことを教えないのか。これは私自身、こんなにいい歳になってやっと気づいたことで、子どもたちには早くから知っていて欲しいと感じる点だ。そこから、「段取り」を生活に応用して、好きなことをしていくことを強く薦めている。そこから起業の話にもなり、なんだか、中学生じゃないけど、私も今からでも好きなことを好きに段取りした生活が送れるんじゃないかと勇気がもらえた。
坂口さん自身、作家であり、絵描きであり、音楽家である。自分の好きなことを、自分で「段取り」したらこういう生活になったとのこと。そして、坂口さんのもうひとつの大きな活動が、ご自身の電話番号を公開し、「死にたいと思ったらかけてきて」と呼びかけていることだ。もう十年も続けられている活動とのこと。その活動の原動力はおそらく、年間2万人もの自殺者がいる日本という国は変だ、という思いからではないかと思う。本書でも、現在の日本という国の在り方、何にでもお金がかかる資本主義の在り方、教育、大人になっていない大人などに対してはっきりと危機感を示している。私も常々、日本の公教育では自分で考える力が育たない、そもそも子どもたちが自分で考える機会が少ない、その結果、「自分で考える」力を持たないまま大人になってしまっていると、自分自身の反省を含めて感じることが多く、同じような危機感を示してくれたことになんだか安堵してしまった。
全体を通して話し言葉で、中学生に投げかける言葉が多く、繰り返しも多いが(特に最後の方はダラダラと長い気もした)、「いや、ホントそう」と共感するところ、「私がなんとなく思っていたことをはっきりと言葉にしてくれた!」とスッキリするところ、「(中学生じゃないけど)私にもできるかも」と勇気をもらえたところと、色んなポイントで有意義な読書になりました。
さっそく、好きなことを「段取り」して、「継続」してみよう。
中学生だけでなく、大人にもおススメです!
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学生時代から、きちんと自分で考えるということをしてきた人はやっぱり違うなぁと感嘆しました。頭がいいから医者になれと言われて変だと感じたという坂口さん。人を治したいから医者になるのではないかと。正論過ぎて、もう。教師からみたら扱いにくい子だったり、少し変人扱いされたかもしれませんが、坂口さんの人生、人に迷惑をかけるわけでもなし、好きに生きたらいいんですよね。「普通」「こうあるべき」というような固定概念にとらわれない人たちの生き方を拝見できる読書も本当に楽しいものです!
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