【読書感想】ホルモー六景 万城目学

読書

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確かにこれは「鴨川ホルモー」のスピンオフで、ホルモー本編を読んだ人ならぜひとも読んでほしい短編集で、ホルモー本編を読んでいない人には少し理解がしづらいものかもしれませんが、それにしたって、素晴らしい短編集ではございませんか。再読ですが、初読みの時よりさらにそう感じます。その壮大な奇想天外さの割には本編では少し物足りなく感じたホルモーを、もっともっと深く感じられます。本編では、主人公安部視点で、安部の身の回りのことがほとんどだったので、安部の知らないところでこんなことがあっていたのね、と、よりホルモーを軸とした背景が過去に現在に広がります。しかししかし、こういう本を読むと自分の歴史の知識のなさに愕然とします。「サツマ」という言葉から「さつま芋」しか連想できず、シンガポールからの留学生に「薩摩藩」のことではないかと指摘された巴を笑うことは、私にはできません。どうにかこうにか目の前のテストを乗り切ることだけを考えて一夜漬けのように勉強し(たつもりになり)、長く知識を保てるようなちゃんとした勉強をしてこなかったことを後悔するのはやはり読書の時ですね。余談は続きますが、大人になってから、「あぁ、今なら、日本史・世界史・地理、いや数学でさえ大変な興味をもって授業を受けられるのに・・・」と思うことはありませんか?(余談終わり)

本書に収められているのは以下の六景。
・鴨川小ホルモー
・ローマ風の休日
・もっちゃん
・同志社大学黄竜陣
・丸の内サミット
・長持の恋

みなさんのレビューにザーと目を通したところ、「ローマ風の休日」と「長持の恋」が人気のようですが、私が好きだったのもやはりその二つでした。あぁ、でもどれも本当にいいのですよ。
本書を読みながら思い起こすと、私も遠い昔、京都の私大に行く可能性があったのですが、結局関東の大学を選んだのは他でもなく自分だったのに、なぜあの時、京都に住むということを選択しなかったのか、と大学に行くという最大にして最優先の目的を忘れて、ほんのちょっと後悔することがたまにあります。あの日あの時あの場所で、京都に住む選択をしていたら私もホルモーをしていたかもしれない。(実際にホルモーをやってみたいかと言われれば、結構過酷そうなので微妙ですが。「ホルモー」と叫びたくないし。)人生に「たられば」がないことはわかっていてもそう考えずにはいられません。と言いつつ、「丸の内サミット」では、関東でもどうやらホルモーが行われているという事実が判明し、私の「もしも京都に住んでいたならば」の考えは、一瞬にして泡のように消え去りました。というか、この短編「丸の内サミット」自体は面白いですが、ホルモーはやっぱ京都でしょ、と思ってしまったりもします。「はいはい、さすが京都ですね」と言われないための作品だったのか、万人に夢(?)を見てもらうための作品だったのか。

ホルモー本編を読んでから本書を読んだ方が良いというのは絶対ですが、「こっちの方が好き!」と言えそうなほどこのスピンオフは良かったです。いやぁ、凡ちゃんの良さがわかる少年、いいなぁ。芦屋、ホントにダメ男だなぁ。ホルモー、めっちゃ歴史あるなぁ。そして、ラストの「長持の恋」はもう全然ホルモー関係なしに、素晴らしかったです。泣きました。(え、なべ丸、実在の人物なんですか。)

ひとつひとつがいとおしい、可愛い作品です。

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うり子
うり子

本作は、休日に楽しいお出かけをしたようなホクホクとした気分で読み終えました。まさに私にとって「読書って最高の娯楽!」と思える作品でした。あぁぁぁ、やっぱり京都に行きたくなってきました。「なべ丸」の名前をこの目で見てみたいです!

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