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こういうの、大好物です。留学だとか、海外赴任だとか、海外で奮闘する話や、社会人で大学入りましたなどの、せんでもいい苦労を自ら進んでして、自分のやりたいことを成し遂げた話とか、「すごいわ、えらいわ」と感心しながら読むのが大変、好きです。おそらく憧れがありつつもなかなか自分では行動できないために、疑似体験させてもらっているんだと思います。
本書なんて、パリですよ、憧れのパリ。しかも国連。将来は英語を使って海外で仕事したいなーなんて夢見る中高生なら一度は憧れるのではないでしょうか、国連。大人になるにつれ、自分にはそんな器もなけりゃ、頭脳もないと、薄々気づき始め、国連なんて遠い遠い存在になっていきますが、そこで、働いたと申されるのですよ、この著者は。ということで、本書を知ってすぐ図書館で予約しました。
ところで、国連で働きたいならフランス語を勉強した方がいい、なんて大学で第二外国語を選ぶときに風の噂で聞いたことがありますが、本当なんでしょうか。そこらへんも読んでいくうちにわかっていくでしょう、と読み始めました。
パリだとか、国連だとかいう前に、この著者、川内有緒さんに度肝を抜かれました。なんてパワフルな方なんでしょう。なんというか、狭い日本で、いわゆる一般的なレールを歩いてきた私からしたら、アリオさん(同僚に「アリオ」と呼ばれていたようなので、ここでもそう呼ばせていただきます)ご自身がアンビリーバボーです。
映画を撮りたくて日大芸術学部に入学し、大学院は突然アメリカへ。スペイン語修得のための短期留学中には、ホストファミリーの反対を振り切って、バスもめったに通らない小さい村へ突撃訪問。シンクタンクやコンサルティング会社勤務ののち、かなりの倍率を突破して国連職員へ転身。その貴重なポジションも6年ほどで手放し、フリーランスの作家になる。
どうです、ざっと書いただけでもこんな感じです。
さらに国連を辞める直前には「何か残したい」と映画を撮る・・・。す芸。すげぃ。
読む前から、国連を辞めたことはわかっていたので、「なぜ?どうして?」と思いながら読み進めたのですが、読めば、わかります。ここはもうとにかく読んでみてと言うしかないです。なんというか、国連という器に収まらないんですよ、アリオさんは。というか、どの器にも収まらない。その時、内から外からやってくる波に乗っていく、そんな人だと思いました。
国連の仕事を知りたいというのなら、本書はあまり役に立たないように思います。そこの分量はそんなに多くないです。しかしながら、パリでの生活や、アリオさんのプライベートなことは、結構書かれていて、期待と違ったけれど、良い意味で裏切られて楽しい読書となりました。
私はとにかく「国連」と「パリの生活」に興味津々で読みました。
「国連」とひとくくりにまとめても色んな仕事があり、忙しさも色々だと思いますが、アリオさんがおられた部署はおもしろくもあり(特に同僚たちが)、ガッカリでもあり・・・といった感じでした。だって、予算がないから仕事がない、なんて!すんごい優秀な人ばっかりいるのに、貴重な才能と人件費を無駄にしているようでして。そうは簡単にいかない事情もあるのでしょうが、「(人材が優秀かはさておき、人件費の無駄は)なんだうちの職場と変わらないじゃん」と思ったり。予算がないという理由だけで仕事が進まないんじゃ、世界平和も進まんよ、と思ったり。それでも、実際に内部におられた人の話として本当に興味深かったです。ちなみに、国連での公用語は6か国語らしいです。
そして、パリでの生活。こちらも大変興味深かった。パリでの家探しは、難攻不落のお城のように、移住者の前に立ちはだかるし、引っ越し業者は時間通り来ないし(これは海外あるあるかな)、システムの不具合で引き落とされた払う必要のない家賃は自分で大家と交渉しなきゃだし。あれ、「住」に関することばかりだ(笑)まぁ、パリは住むというより旅行でいいかな、と思いました。しかし、パリ市内をあちこち散歩したり、大好きな公園でジョギングするとか、はぁ、やっぱりステキ・・・
本書で自分の「作品」として、パリで出会った人たちについて文章を書いていたアリオさんは、その後「パリでメシを食う。」として本を出版したらしいので、そちらも読んでみたいところです。
あとがきで、国連で働きたいけれど、という相談に対して、アリオさんはこう書いています。「どこか特定の組織で働くといったような代替不能な目標を立てて、そのハードルの高さに思い悩むよりも、今この瞬間にその足を軽やかに前に出して泳ぎだしてごらん」と。「日々積み重なる「今日の自分」という経験ほど、絶対的なものはない。それは、どんなことがあっても誰にもとられない。」と。この言葉こそ、アリオさんの生き方なのだと思いました。
面白かったです!
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はぁ、やっぱり一度くらいは海外に住んでみたかったなぁ、とこの手の本を読むといつも思います。それだけでなく、仕事のうえでも若い頃にもっとチャレンジしておけばよかった、いつまでもコンフォートゾーンでぬくぬくしてるんじゃないよ、若い頃の自分!と過去の自分に発破をかけたくなりますが、アリオさんが言うとおり、日々積み重ねた「自分」が今の自分ですもんね!
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