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出だしはカバーヨ・ブランコを探すために冒険家さながらの経験をした著者の体験談から。物語風の始まり方でなかなかおもしろそうだぞ、と思った。
しかし、まぁ、長い。タラウマラ族のことを知るためにカバーヨ・ブランコを探すのですが、タラウマラ族がいるとされるメキシコのバランカス・デル・コブレがどんなに秘境かの説明なんか、なっが(長)!と思ってしまいました。するとすると、この書き方はこの後もずーっと続くのだと思い知ることになります。話の主軸だけ書いても貧相でつまらなくなるから、たまには装飾とか、脇道に逸れた話も、主軸を膨らませたり、興味を引くために必要だとは思いますが、それが長いのなんの。(最近、たまに読む翻訳本がやたらと無駄に長い物が多い気がするんですが、英語圏独特の書き方なんでしょうか。若い時にあまり読書してこなかったから今更ながらこんなことが気になります(笑))
登場人物の名前を覚えるのが元々苦手な私としてはカタカナ、しかもスペイン語圏の名前がこれまた覚えにくくて、「んああ、これ誰だっけ?」と前のページをめくって探すことたびたび。
もっと読み進めてわかってくることですが、登場人物の名前がわかりにくいのは、私の問題だけでもなかったようで、本書自体、色々なことがごっちゃまぜに書かれているようなのです。Aということについて話が進んでいると思ったら、ひょこっとBに関わる人が出てきてそのままBのことになる。Bの話が進むのね、と思ったら、Bではなく、そのひょこっと出の人についての話が長くて、Bのことちゃうんかい、マイケル(仮名)のプロフィール的な紹介だったのね、と頭で整理し直す・・・みたいなイメージです。気を付けて読んでいかないと自分が今どの地点にいるのか、簡単にわからなくなります。本の中で、迷子。「ここはどこ」状態。たまたまこの時期、6冊ぐらいに同時に手を出してしまい、あれ読んでこれ読んで、をしていた私はもうほぼずっと迷子でした。(自業自得)
序章が冗長だけど、つまりは、著者は走るのが好きだけど、怪我に悩まされていると。で、タラウマラ族というすんごい走れる民族がいるからその民族の秘密を知りたいと。そういうことですね。前半は。元も子もないまとめ方をしましたが、長いからつまらない、というわけではなかったです。というより、むしろ面白かったです。これがフィクションではなくノンフィクションなんですから!
タラウマラ族の民族としてのあり方もなかなか興味深かったです。争うことを好まず侵略者からはとにかく逃亡する、金銭的なやりとりではない取引を重視する、そしてなによりめっちゃ走る、などなど・・・。
中盤を過ぎたあたりから、レビューを書くにあたって、本書をどうまとめたらいいのか悩みながら読みましたが、私の脳内で理解できた本書の主題は下記。
まず、カバーヨを通じてタラウマラ族の走りの秘密を探り、さらにそのカバーヨが開催したウルトラマラソンの実況中継のようなレポート。(そうそう、このカバーヨ・ブランコという人はタラウマラ族ではないんです。何かから逃れた落ち武者的な人で、タラウマラ族にも認められている人ってところでしょうか。)
それから、有名スポーツブランドが生み出した多くのランニングシューズが実はランナーの足に悪影響を及ぼしてしまい、人間の走り方を変えてしまったという科学的なデータを含めた説明。
私が理解出来た範囲ではこの大きな2つの主題にたくさんの肉付けがあってこの分厚さになったものと思われます。
先述しましたが、読みにくいことこの上ないですが、なかなか興味をそそられるふたつの主題で、とても面白かったです。
ランニングシューズが実は悪影響を・・・という話は、丸っと信じ込むのも危険かもしれませんが、小中学生の時、かけっこやリレーの時は裸足の方が速く走れる気がして、進んで裸足になっていたことを足の裏の砂の感覚と一緒に思い出しました。(そういえば、小学校の運動会で、我が子たちは裸足で走ってなかったな・・・今時は裸足で走るという選択肢はないのかな・・・)
個人的なことを申せば、日常的に走ることは皆無でございます。というか運動自体できていないです。しかしながら、すぐ読んだ本に影響される私としては、走りたくなりました。
人間は「長く走るために進化した」という説はなんだか妙に納得できましたし、「人は年をとるから走るのをやめるのではない、走るのをやめるから年をとるのだ。」というこの言葉はかっこよすぎました。
ウルトラマラソンが終わった後は、これまでの長々とした文章が嘘のようにメンバーたちはすっと爽やかに解散し、本書も終わりました。終わり方は悪くなかったです。
”読んだ後走りたくなる”というキャッチコピーは嘘じゃないと思いました。
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子供たちが夏休みに入るとなぜか忙しくなりますね。忙しさを言い訳にずいぶん長いこと更新をさぼってしまいました。我が家の子供たちは、習い事の発表会が終わり、やっとこれから夏休みを存分に楽しめるといった感じ。
子供たちに付き合いながらも、細々と読書したいと思います。
さて、本書を読み終わったのは少し前。えぇ、走ることは実践できていません。でも、やはり憧れがあります。美しいフォームで走る自分・・・こういう風に思えるだけでも読んでよかったと思いました。ただ、読み返すことはないかな~。
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