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談話室で「笑えるエッセイを教えてください!」と投稿したところ、おススメしていただいたものです。(おススメいただいたものは順番に読んでいこうと思っています。)
宮下奈都さんは「羊と鋼の森」と「太陽のパスタ、豆のスープ」くらいしか読んだことがなく、これまで宮下さんの作品を積極的に読もうとしたことはないのですが、なんとなくリスペクトしている作家さんです。それはなぜかというと、書くということについての才能はもちろんなのですが、あるインタビュー記事が心に残っているからなのです。そのインタビューで子育てについて触れられていて、すごくうろ覚えなのですが、こんなことをおっしゃっていました。
「公園で走り出した子どもに、危ないから走らないでなどと、親が先に声をかけてしまうことが不思議。子どもが転んで自分で学ぶ機会を先に奪ってしまう。」
でも、ここまで書いてみてなんですが、このインタビューが本当に宮下さんのだったのか、そして本当にこんなことをおっしゃられていたのか、すごく自信がなくなってきました。ただ、この記憶が本当だという前提で続けさせていただきますと、私はこのインタビューを読んで、「あぁ、素晴らしい感性をお持ちの方なんだなー、だから小説なんてものを書けるんだろうなー」と思って、ひそかにリスペクトしていたのです。その、子どもに先に先に注意してしまう親たちを非難しているわけではなく、その行為に「もったいない、せっかく子ども自身が学ぶ機会なのに」とおっしゃっていた記憶が強く残っていて、その「もったいない」と思う感性に感心したのでした。
あ~、ここまで書いても本当にうろ覚えで、自信がないです。
で、やっと本書のことですが、面白かったです。おススメくださった方、ありがとうございます。
福井在住の宮下家が期間限定で北海道のトムラウシに山村留学するその記録なのですが、まぁ、三人の子どもを連れて、宮下さん夫たっての希望で北海道移住というところからぶっ飛んでるなーと思うのですが、トムラウシに行ってみてビックリ。上には上がいた。同じく山村留学で来ている家族が他にも何家族かいて、しかもトムラウシでの生活が気に入って延長して数年住み着いているという!旦那さんを千葉に残して来ている家族もいるという!はぁ、すごい。比較する必要は全然ないのだけれど、そんな人たちに比べて私たち夫婦の凝り固まった考え方よ。私たちはピシッとレールの上を歩いてるんだな~なんて、夫と話したものです。
宮下さんによる端的で鋭いツッコミには何度も笑いましたし、お子さん達が通う小・中学校の授業や行事には何度も驚かされました。学校行事も地域行事も全て地域のみんなが関わり、大人も本気になる。登山をはじめ、なかなか経験できない自然での体験もなんて貴重なんだと、読んでいてこちらまで胸熱でした。
それだけでなく、宮下さんの感性がやはり素晴らしかったです。山村留学ということで、いずれトムラウシを去ってしまうことに対する後ろめたさというか、常にこうやって外部からの人を受け入れては去っていく人を見送っていくトムラウシが地元の人、特に子どもに思いを馳せ、いいのだろうか、何かをトムラウシに返せているのだろうかと、思い悩む気持ちがありありと伝わってきました。長男さんが中学三年生という年にトムラウシに来た宮下家にとって、長男さんの進学先を慎重に考えざるをえず(福井に帰るか、トムラウシに残ったとして、親元を離れて帯広の高校に進学するかなど)、大変で難しい決断をしなければいけなったんだろうな、と・・・。
結局山村留学を延長せず、予定通り1年で福井に戻った宮下家ですが、何にも代えがたいものを得たのだろうな、と心底羨ましく思ったものです。
自分ではなかなか経験できないことをほんの少しですが、疑似体験させてもらった気がします。
大変面白かったです。おススメです。
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これを読んで宮下奈都さんが気にならない人はいないと思います。宮下さんの作品、他も読みたくてうずうずします。そして、とても良い意味で個性的な3人のお子さんが、現在どのように成長しているのか気になります。子育てという点でも宮下さんは素晴らしい先輩だと思いました!
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