【読書感想】13歳からの地政学: カイゾクとの地球儀航海 田中孝幸

読書

ブクログに投稿した感想をこのブログにも載せています。

私の本棚はこちら。良かったら寄って行ってください。

**********

評判通り、すっごく良い本でした!長い間待って図書館で借りたのですが、手元に置いておきたいと思う本でした。さっそく購入しようかな~。そして、ぜひとも子供たちにも読んでもらいたい。「13歳から・・・」とあるように、やはり小学生高学年、中学生くらいでないと難しいかもしれませんが、必ず読んでもらいたいと思いました。

この歳になってなんですが、あらためて世界の力関係などを平易な言葉でわかりやすく教えてもらったという気がします。グローバル化だとか多様性だとかが声高に叫ばれている今日、内にとどまってばかりではなく、外にも目を向けないと、と思ってはいたものの、そのことの本質が良く分かっていなかったことに、本書を読みながら気が付きました。本書で、そのことの本当の意義、大切さを深く理解できた気がします。

本書は、たまたまアンテークショップの古い地球儀を見た兄妹がその店主に7回の講義を受けるという物語風に進んでいきます。私は最初、たったの7回!と思いましたが、この一回一回がとてもうまい具合に、狭く広く深く浅く、と世界を知れるようにできていて、本当にわかりやすかったです。「カイゾクさん」と呼ばれているこの店主の地政学講義、私も受けたいと強く思いました。

特に印象に残った話をひとつだけあげるとするなら、5日目の講義「絶対に豊かにならない国々」です。「なぜアフリカにお金がないのか」というところから入るのですが、漠然と「人種差別」や「植民地だった過去」などを考えていた私は、あらためて自分の考えの浅さと、それ以前に、関心を持っていなかったのではないかという、カイゾクさんがいうところの「大国病」に気づきました。アフリカの問題から話はそれますが、日本は世界的視点でみると強い国、そして数少ない「加害者の国」であり、多くの「被害者の国」からどう見られているかという話もすごく勉強になりました。言われてみれば、「なんでそんなこと考えたこともなかったんだろう」と思いましたが、それこそ、日本にずっと住んで、外国との交流が少ない私にはさもありなんというところでした。これまで過去の日本の過ちをねちねち言ってくる韓国にあまりいい気がしていませんでしたが、少し考えが変わりました。「過去の過ち」は現在進行形の問題にもなっているんですね・・・
で、話は5日目のアフリカの話題に戻りますが、アフリカが貧しい最大の理由は国外にお金が流出していること。そして、その背景にあるのは民族や部族が多く、植民地時代に無理やり引かれた国境線ではうまくまとまらないことなどがあるそう。これを読んでいるうちに、絶望的になりかけた私ですが、ちゃんと成功例がありました。シンガポールです。多民族国家として今豊かになっているシンガポールにはきちんと先を見据えた政策があったのですね。アフリカの国々にも希望があると思いました。

このレビューではこのアフリカの章を取り上げましたが、どの話題も興味深く、よく考えるとすべてが地球規模の問題で、つながっていることがわかります。世界はひとつなので当然とういえば当然ですが。
そして、この本の素晴らしいところは、「地政学」という視点から世界の問題を見て、自分で考えるということ以外でも素晴らしい言葉がたくさんちりばめてあったことです。
「知識を増やすということは、だまされないように武装するということなんだ」
「差別の反対語は、交流だとわしは思っている。君たちが言ったように、自分が差別してきた対象と交わって、友達を作って、知らないことを減らしていくことが、地道だが最も効果的に差別をなくす方法だ。」
「好奇心と勇気を持って、自分と違うタイプの人と交流する。それによって、自分のかたよった考え方や、知らないことを減らしていく。自分と見た目や生まれ育ちが違う人たちへの興味を持ち、敬意を持つ。そして、人が似た者同士でかたまりにくくするような仕組みを作る。こういったことを地道に続けることができれば、たくさんの国で起こっている民族問題もすこしずつかいけつしていけるだろう。」
などなど。ストレートでわかりやすいこういった言葉は、子どもでなくとも心に刺さります。
学ぶこと、興味と敬意を持って知らないことを知ろうとすること、自分と違うタイプの人と交流すること。
そうすれば、いつか差別や民族問題もなくなっていくのではないかと希望を持って読了しました。

子どものための本と思わずに、大人も読んで欲しい。めちゃくちゃおススメです。

**********

うり子
うり子

端的にわかりやすく表現しているがゆえに特に中国に関する記述なんかはよく言い切ったな、中国の人怒らないかな、となぜか後ろを振り返ってしまった私ですが、もし反論があるのならそれはそれで話し合っていくしかないのでしょう。そういうことの大切さもきちんと記述されている本でした。

コメント

タイトルとURLをコピーしました