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実は辻村深月さんが好きです。といってもまだそんなに作品を読めていないのですが、「かがみの孤城」が素晴らしすぎてこのひとつの作品だけで好きになりました(ポッ)。
そして、最近、「自分の言葉」に自信がないことに気づきました。5年日記をつけ始めて数年経つのですが、5行くらいにぎゅっとその日の出来事や自分の気持ちを書き表すということが全然上達しないし、たまに友達との会話を思い出しては「あそこであの言葉選びは違ったな」とあとあとクヨクヨしたりするし、なんといってもこのブクログ。読書の途中、そして読後、すごく感動して「あぁ、早くこの感動をブクログに・・・!」と思って、いざ書き出しても、感動を伝えきれる言葉が、表現が、出てこない。くぅ、悔しいぜ!と毎回思います。
前置きが長くなりましたが、そんなこんなで、タイトルと、著者が辻村さんということだけで本書が気になり読み始めました。
本書は毎日小学生新聞に連載された記事を書籍化したものです。小学生向けにやさしくわかりやすい言葉で、まるで話しかけるように書かれています。
「どうして本を読まないといけないのか」といった率直な質問や、「読書が好きだけれど国語の成績につながらない」といった悩み、「創作で人のマネはダメですよね?」といった深い(と私は思った)質問にも、”一緒に考えていきましょう”というスタンスで、丁寧に順を追うように辻村さんの考えや説明が綴られています。
全体を通して、「好き」という思いを大事にして欲しい、友達との関係の中で素直に表現できないことがあるとしても「あなたの言葉」を大切にして欲しい、という辻村さんの思いが溢れるものでした。「辻村さんは大人なのに、どうして子どもの気持ちがわかるのですか?」という質問が辻村さんに投げかけられたとのことですが、本当にそう思います。私はすっかり忘れているというか、想像力がないというのか・・・。辻村さんに「こうこうこうだから、こうなんだよね?」と書かれると、「あ!そうだったわ、そんな風に感じてたわ、昔」とか「昔はそんなふうに尖ってたわ」と、いわゆる若さゆえの斜に構えた姿勢や、友達関係の中で本来の自分とはちょっと違う自分を演じてたりしていたことを、引き出されるように思い出しました。やっぱり辻村深月さん、すごいな、と思いました。
本書の感想とは少し離れますが、辻村さんが「かがみの孤城」を書いていた時に話を伺ったというスクールカウンセラーの先生の、「子どもを支える仕事は風のようでありたい」という話がすごく心に残っていて、本書にもその話がまた書かれていて、小躍りしたくなるほどうれしかったです。あぁ、またこの素敵なお話に巡り合えたと。そのスクールカウンセラーの先生いわく、「この先生のおかげで平気になった」と思われるようじゃまだまだで、「気づいたら平気になっていた」とその子が思えるくらい風のようでありたい、と。初めてこの文章を読んだのが、いつなのか、どこでなのかも思い出せませんが、初めて読んだ時感動しました。その後、これが「かがみの孤城」に関係するものだったと知り、そしておそらく今回3度目に出会ったという感じ。私自身、先生でもなんでもありませんが、これはたぶんずっと忘れることはないと思います。
ということで、最後本書の感想ではなくなってしまいましたが、子どもはもちろんのこと、大人が読んでも「うんうん」と頷くことができる本だと思います。大人も、自分の好きや、自分の言葉を大事にしていきたいですね。
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最近は一昔前より、SNSといったものの存在も大きいのだと思いますが、「自分の好き」を堂々と表現できたり、自分の言葉を外に向けて発信したりしやすくなったように思います。とはいっても、小学生、中学生くらいの子どもたちが悩むことって、私たちの頃とそんなに変わらないのかも、と思ったり・・・そんな子どもたちに寄り添ってくれるような本書でした。
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