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私はふだん読書した後には感想を残しているというのに、メモをしながら読んだり、線を引きながら読んだりということはしないです。(だからうまく感想がまとまらない。)
メモは、「ええぃめんどくさい、先を先を読みたい」という気持ちがあり、線を引かないのは、本棚からあふれだす本を目の前にして、「メルカリで売れるかも」と思うからですが、なぜか本書は初めから赤鉛筆を握りしめて読み出しました。これが大正解。ここぞと思うところがたくさん出てきて、しかも途中で、「アンダーラインを引きながら読もう」との記述もありました。
さて、本書は、独学を「動的なシステム」として捉え、徹底的に「知的戦闘力を高める」という目的に照らして書かれているとのことです。そもそも「知的戦闘力が上がる」とどうなるかというと、「意思決定の質が上がり」、優れた意思決定は優れた行動に直結し、優れた行動は優れた結果をもたらすのだそうです。
まず、独学の必要性については、以下4点があげられていました。
1.知識の不良資産化
2.産業蒸発の時代
3.人生三毛作
4.クロスオーバー人材
この独学で知的戦闘力を高めて、企業内にとどまりながら、企業の力をうまく活用して社会変革をリードしていく「知的な革命家」をたくさん育成したい、というのが著者の目的だそうです。
次に、独学システムの4つのモジュール(戦略・インプット・抽象化/構造化・ストック)についての解説がありました。以下順番に振り返ってみます。
1.戦略
やみくもなインプットの前に独学の大きな方針となる「独学の戦略」を決めること大事。これを具体化するには「何をインプットするか」を決めると同時に「何をインプットしないか」を決めることも重要。しかし戦略は荒くて良い。なぜなら、学びは「偶然の機会」を通じてしか得られないから。独学の方針はジャンルではなくテーマで決めること。戦略があるとアンテナの感度が高まる。
ここで読書に関する注意喚起がありました。
「読書は、他人にものを考えてもらうことである。本を読む我々は、他人の考えた過程を反復的にたどるにすぎない」
これは、以前にも聞いたことがある教訓です。ぐさりと痛いところを指摘されたような気になりますが、それでも知的戦闘力をあげるという目的では読書は避けられないというのは、著者も認めるところです。領域の横断をしながら、しなやかな知性が発揮ができない丸呑み読書は気をつけようというところかな、と思います。
2.インプット
・本での勉強だけでなく、色々なインプットソースがあり、それらを組み合わせることが重要
・著者の薦める読み方
ビジネス書:乱発される安易系は避けて名著を読み、読書ノートは作らない
教養書:基本は雑多な本を幅広く、気の向くままに読み、読書ノートを作る
・成功する人は「さまざまな出会いや偶然を、前向きに楽しめる」という共通項がある
・継続的に質の高いアウトプットを出し続けている人に共通しているのは、人生のどこかでひたすらインプットし続けている時期がある
・「共感できる」「賛同できる」心地よいインプットばかりしていると、知的ストックが極端に偏って独善に陥る可能性がある
・どんなに知的水準の高い人でも「似たような意見や志向」を持った人たちが集まると知的生産のクオリティは低下する
・強い反感や嫌悪感を覚えるときはそれをメモしておこう。後で色々な気づきにつながる
・名著古典と言われているもの、つまりハズレのなさそうな評価が確立したインプットをしっかり押さえることが大事
・スジのいいインプットの純度を高めることが必要=質よりも密度が重要
・見識ある人物に会って、その人物から薫陶・知見を得るというのはもっとも効率のいい学習方法
・問いがないところに学びはない。その問いに対する答えを得るためにインプットを行うとインプットを楽しめるばかりでなく、効率も定着率も高まる。結果的にストックも充実する
・浮かんだ問いをきちんと捕まえて、日常生活の中で感じる素朴な疑問をメモする癖をつける
・「インプット→抽象化1→抽象化2→抽象化3→構造化1」を実践する
3.抽象化・構造化
・抽象化はなぜ重要なのかというと、色々な状況に適用して考えられるようになるから
・公理系を導く部分が抽象化、公理系から様々な命題を演繹する部分が構造化に該当する
・固有の文脈が前提になった知識を固有の文脈に当てはめても意味がない
・領域を横断するルネサンス人になれ。そのためには、知性はもっとしなやかであるべき
・抽象化の力を高めるコツはとにかく場数を踏むこと
・「得られた知識は何か→その知識の何がおもしろいのか→その知識を他の分野に当てはめるとしたらどのような示唆や洞察があるか」を実践する
4.ストック
イメージはイケスに情報という魚を放すイメージ。
目の前の現実的な問題を考察する際の助けとなる洞察を与えてくれるのが知的ストックであり、それが厚くなると知識の時間軸と空間軸を広げることで、目の前の常識が「いま、ここ」だけのものでしかないという相対化ができる。そして、イノベーションにつながる。
イノベーションというと「常識を疑う」と言われるが、そうではなく「見送っていい常識」と「疑うべき常識」を見極める選球眼をもつことが大事。
また、厚い知的ストックを持つことで創造性も向上する。
アイデアとは、既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもなく、新しい組み合わせを作り出す才能は、事物の関連性を見つけ出す才能に依存する。だからこそタグ付けが必要だし、アイデアの質はアイデアの量に依存する。
ストックの作り方のひとつとして、本を読むときは、アンダーラインをひく。ひくかひかないか迷ったらまずアンダーラインを引く。なお、共感できないところや反感を覚えるところもひいておくとよい。
アンダーラインをひいたところのどこをイケス(著者の場合、イケスはエバーノートだそう)に放り込むか見返す。多くて9箇所に絞る(←この読書でこれは全然守れてませんが・・・。)。
ただ、転記するだけでなく、必ずビジネスや実生活における「示唆」を書きだす。
そして、アンラーン(消去)する。イケスに放し、必要な時にとってこられるようにして、覚えることを目指さない。
ただし、音楽を聴くように読書ノートを見返す。
最後に教養の独学ということで、11の分野(歴史、経済学、哲学、経営学、心理学、音楽、脳科学、文学、詩、宗教、自然科学)からそれぞれ9冊、合計99冊の本が紹介されています。これはぜひとも全部読みたいと思いつつも、私に読みきれるだろうかとひるんでしまいました。
著者が考える教養を学ぶ意味は以下のとおり。
1イノベーションを起こす武器となる
2.キャリアを守る武器となる
3.コミュニケーションの武器となる
4.領域横断の武器となる
5.世界を変える武器となる
読み終わって、賢い人たちっていうのはこういうことを考えて生きているんだと、本当に尊敬の念をいだきました。「賢い人」というのはちょっと違うかな。イノベーションを起こそうとする人、世界を変えようとするような気概のある人とでもいうのでしょうか。全く私はこの歳になるまで何をしていたんでしょ。これまでのことを嘆いても仕方ありませんが、「継続的に質の高いアウトプットを出し続けている人に共通しているのは、人生のどこかでひたすらインプットし続けている時期がある」という記述にはグサッときました。人生においてそういう時期があってもいいのではないかと思ったことがあります。遅くなったけれど、少しは教養を身に着けようと思った次第です。「具体と抽象」「メモの魔力」を読んで学んだこととつながって、大変学ぶところがあった良書でした。
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歳を重ねるにつれて、自分の教養のなさを自覚するようになりました。これからでも遅くないと信じて、独学に励むのだ―――――!
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