【読書感想】からくりからくさ 梨木香歩

読書

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難しかったです。ずっと前に読んで、どうにもこうにも自分の中で「読めた」という感触がなかった記憶があり、今回はもうだいぶ歳も重ねたし、「読める」と思ったのですが・・・(以前、全く楽しめなかった「村田エフェンディ滞土録」は、数年後に読んで大好きになったという経験があったのですが、今回はそうはいかなかった・・・!)

草木染めの修行をしている蓉子は、亡くなった祖母の家に住むことにし、学生の下宿として部屋を貸すことにします。集まってきた下宿人は、同世代である美大の学生の紀久、与希子とアメリカ人のマーガレット。紀久は紬、与希子はキリム織りの研究をしており、マーガレットは東洋医学を学んでいます。4人に共通するのは今では「タイパ」や「コスパ」という点から嫌煙されがちな「手仕事」が好きというところでしょうか。その4人ともうひとり「りかさん」という蓉子の市松人形が、網戸もない古い日本家屋で、庭で摘む草花を食卓に出したりと、なんとも俗世離れした共同生活を送ります。「りかさん」を軸に下宿人たちの宿世の縁がだんだんと明らかになっていきます。

染物の話、織物の話、能面や人形の話、そしてたくさん出てくる植物の名前。なんだか作者の興味の深さと知識の豊富さに圧倒され、そのどれにも詳しくないのに、こう、飲み込まれていく感覚が少し息苦しかったです。それにしても、マニアックすぎませんか。こんなマニアックな話、どれだけの人に受け入れられたのかと要らぬ心配をしながら読んだのですが、そこはさすが梨木香歩というべきところでしょうか。どうやらたくさんの人に読まれ、評価されているようでした。かくいう私も、今回も「読みきれなかった」という思いは強いものの、「嫌い」にはなれず、またいつか、とリベンジを誓ったのでした。

たくさんの人がレビューで書かれていましたが、とにかく相関図がないと関係が複雑で、もうこんがらがっちゃいます。途中からネットで拾った相関図をチラチラ見ながら読みました。「りかさん」からこんなふうにつながるとは、まさに「宿世の縁」でした。

ふと出てくるマーガレットの過去の話で、ピーナッツバターとジェリーのサンドウィッチの話は胸に迫るものがありました。日本語が母語ではないマーガレットが、端的に語るこのセリフは、漠然とした表現になりますが、梨木香歩さんにしか書けないと思いました。梨木香歩さんにしか、マーガレットに語らせることはできないというか。

竹田という与希子が惹かれている青年が、共通の知人の神崎についてその人となりを語るところがあるんですが、こんな表現力ある大学生がおる?!と変なところで深く感心してしまいました。しかも、すごく説得力があるんです。神崎ってそういう人よね、と納得してしまうところと、そういう類の人っているよね、と一般論的にも納得してしまうというか。神崎がこの4人の共同生活にもたらしたものは大きすぎますが、なんだか本質はそこではない気がしました。神崎の件は、あくまで支流というか。うまく言えないのですが。

神崎といえば、トルコに渡り、自身の危険を顧みずにクルド人の奥深いところまで入っていこうとします。唐突に出てきたように感じるクルド人というトピックはマーガレットとつながりがあるのですが、梨木香歩さんがどうしても避けて通れないことなんだろうな、と思いました。ここも作者の「書かなきゃ」という感じが胸に迫ってくるようで、息苦しいような、でもやはり必要なんだろうなというような・・・

最後、作品と大事な家が燃えあがってしまうところは、登場人物の芸術的感覚に全くついていけませんでした。が、先述したように、決してこの小説を嫌いだとか無理だとか思えないものがありました。

それぞれの暮らしや興味や過去からのつながりが、縦糸と横糸になって織り込まれた一枚の織物のように壮大な物語でした。

それにしても終始、主人公である蓉子自身が私にとってはなんだか不思議な人でした。浮世離れしたというか、何か特別な力を持っていそうな、つかみどころがないのに、一番地に足をつけて生活しているような。自分とは対極にある人のように感じられ、羨ましさが勝ったのかもしれません。

次は「りかさん」を読みたいと思います。これは、どうやら本書より前の蓉子とりかさんの話らしいです。この二冊をどの順番で読むか悩みましたが、出版順に読むことにしました。

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うり子
うり子

自分の読解力のなさを痛感しました。ただ、面白くなかったというわけでは決してなかったです。

最近思うのですが、私には圧倒的に知識と語彙力と経験が足りない。知識と語彙力に関してはこれまでの不勉強を悔いているわけですが、これから読書などを経て真面目にコツコツ習得して、経験に関しても読書を通じて疑似体験させてもらおう、とさらに読書が楽しみになってきました!

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