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オラムとともにオゴタ藩のギラム島に連れてこられたアイシャが目にしたものは・・・!
というところで第2巻が終わってて、何だろう気になるな~と思っていたのですが、落ち着いて考えれば、そうよね、というものでした。
以下思いっきりネタバレです、ご注意ください。(「香君」についてはずっとネタバレレビューしてきましたが・・・)
なんとこれまで海の近くでは育たないといわれていたオアレ稲が育っていました。しかも、オオヨマにたかられていても育つ稲まで。オゴタ藩の秘密を知ってしまったアイシャとオラムでした。
ミリアに軟禁されている二人を救いに来たのはやはりマシュウ。ミリアとの政治的駆け引きは私のぼうっとした頭にブスブス刺さるやり取りでした。こんなふうに頭が切れる人になりたい、と変なところで感心してしまいました。
さて、オオヨマの被害により、多くの民が餓死するというような悲惨な状況は、ミリアとの駆け引きによって獲得した新しいオアレ稲によってどうにか回避できます。それを「救いの稲」として全領土で栽培するようになりますが、アイシャはどうしても不安が拭えません。初代香君が定めたという「絶対の下限」を下回る肥料を与えたオアレ稲に恐怖さえ覚えるのですが、他の道がない以上、大飢饉や帝国の崩壊を防ぐには、この「救いの稲」を使う手はないとマシュウは判断します。
そんな中、ずっと行方不明だったマシュウの父と思われる男性が発見されたとの一報が。故郷の西カルタン、大崩渓谷に急いだアイシャですが、これまで見たことのないバッタのような虫の大群が押し寄せているという危機に面します。そのバッタのようなものはオオヨマをだけでなく、オアレ稲、さらには周りの植物までもを食いつくしながら、凄まじい繁殖力で、「救いの稲」の栽培地にどんどん飛来していきます。なんとかバッタより先回りして、オアレ稲を焼却しようと急ぐアイシャとミジマですが、なかなか焼却されてもらえなかったりで、苦戦します。
そんな中、昆虫に詳しい師が現地に赴いてくれ、この災害に転機が訪れます。しかししかし、どうにかこの「天炉のバッタ」の被害が全土に及ぶことは防げたとマシュウやラーオ師がほっと胸をなでおろしているところに、現地に残っていたアイシャからの鳩便が届きます。
というのが第3巻でした。
激動の第3巻でした。物語が大きく動き、アイシャにとっても香りの声がかなりうるさいだろうな、といったストーリーでした。そして、なんというか、示唆的な内容でした。この「天炉のバッタ」による災害は、決してファンタジーではなく、大なり小なり似たようなことが昔からあって(そしてこれからも)、都度自然の力に圧倒されながらも、人智や自然の力によって乗り越えるというなことが実際にあったのだろうと思いをはせたりしました。直接的に農作物と害虫や気候の変化といったことだけでなく、第2巻のレビューでも書いた気がしますが、政治的なことも現実世界を反映させているかのようでした。これまで自分とは無関係と思ってきた「為政者」の立場からの景色もマシュウやアイシャを通して、とても興味深く見ることができています。
この第3巻では「絶対の下限」を破って作られた「救いの稲」はまだ残っています。この稲はこのままウマール帝国が属国をつなぐ鎖となり続けるのでしょうか。「異郷」への道はマシュウやアイシャの前に開かれるのでしょうか。(この「異郷」とアイシャや初代香君との関係らへん、理解度が低く、すでに記憶もあやふや。第2巻を読み返すべきだけど、返却済みーーー!)
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ある国の長い長い歴史の中の怒涛の一期間を読んでいるようでした。作者の描こうとする大きすぎる世界に少しついていけないような気がするほど、「上橋菜穂子の世界」でしたが、筆力と創造力、知識の豊富さはさすがというしかありません・・・!
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