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いつの頃からか、私は村上春樹作品が苦手になり、自分では手に取ることがなくなった。昔はよく読んでいたのになぁ。そして前回、「女のいない男たち」を貸してくれた人が今回また村上作品を貸してくれた。
副題のとおり、村上春樹が父親(たまに母親)について語った短い文章。
村上春樹さんは、かなり長い間父親とは疎遠だったということだが、そういえばそんなことを聞いたことがあるようなないような。
父親が亡くなった後、父親の経歴、戦争体験などをたどり、自分のルーツを見つめて、こう書いてあった。
「我々は結局のところ、偶然がたまたま生んだひとつの事実を、唯一無二の事実とみなして生きているだけのことでなのはあるまいか。」
その通りだと思う。私も最近ぼーと似たようなことを考えている気がする。私がこの世に生を受け、生きていることに意味なんてなく、単純に偶然にすぎない、というようなことを。もちろん、だからといってこの生をちっぽけだとかは思わない。この偶然に意味を持たせるのが人間なんだと思う。
そして、村上春樹さんは少しでも父親の経歴が、特に戦争体験が違うものとなっていたら自分は存在しなかったということを考え、こう書いている。
「戦争というものが一人の人間ーごく当たり前の名もなき市民だーの生き方や精神をどれほど大きく深くかえてしまえるかということだ。」
あらためて戦争のある時代(今も海の向こうではあるわけだけど)に、ままならない人生を送った人たちを想った。
村上春樹さんの文章としては短いし、とても読みやすかった。これは借りて良かったと思った。
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村上春樹さんが素晴らしい作家さんであることは重々承知なのですが、あの独特の世界観に入っていけるパワーがもうないんだと、コメントいただいた方とのやり取りでわかりました。この本は村上春樹が苦手な人にもオススメできます。
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