【読書感想】鳥と雲と薬草袋/風と双眼鏡、膝掛け毛布 梨木香歩

読書

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著者いわく、「専門的な知識もないまま、好きが高じて書き綴った「地名を巡る」小文」で成る、「鳥と雲と薬草袋」と「風と双眼鏡、膝掛け毛布」の二冊を一冊の文庫本にした本書。同じテーマを一気に読めてファンとしては嬉しい限りです。前者の目次を数えると49の地名について書き綴られているようで、後者はそれ以上でした。二冊のタイトルがなんとなく似ていることにも納得しました。

梨木香歩さんといえば、鳥、カヤック(と水辺)、草花、神話などにお詳しいと踏んでいます。が、地名にもこんなにお詳しいとは。そしてこんなにも日本各地に足を運んでおられるとは。しかし、「家守綺譚」の続編である「冬虫夏草」なんかを思い出してみると、本書にあるように足を運んでその土地を知ろうとする梨木さんは容易に想像できます。いつものことながら、その知的な好奇心というよりもっとなんというか、知ろうと、知らなければ、とそれ(今回だと地名)に寄り添う姿勢に深く感心いたしました。

「通る人がなくなると、道は消える」「歩かねば」と何か使命感にかられているのかと思いきや、謎が解けなかった地名については想像や考えにとどめ、そういう謎があってもよいとする軽やかさが心地よかったです。
地名や地形に思いをはせながら、例えば、「岬」について次のように綴っています。
「さきへ、さきへと岬の先端まで辿り着いて、鳥ならば飛べもしよう、魚ならば泳ぎもできよう、けれど人は、そこからどこを目指すのか。岬に辿り着いた人は、一様にしばらく声もなく呆然と海の彼方を眺める。
さあ、ここまでだよ、と限界を知らされることは、人にとって救いではないだろうかと、行き過ぎた文明の末路が目の前につらつくようになったここ最近、特に思う。もうここから先は行けないのだ、と悟ることは、もうここから先に行かなくてもいいのだ、という安堵にすり替わる。」
こういう思考がいかにも梨木さんらしくて「あぁ、また、なんという思考を・・・」と思うと同時に、はっとさせられるものがありました。

地名の由来を探り、その土地のかつての姿を自分の中に映し出そうとする中で、その土地に縁のある人物についての説明もたくさん出てきました。その博識さに感服ですが、私は沖縄の東風平(「こちんだ」と読むそう)で生まれ、今でいうパラハラに苦しんだ民権運動家(沖縄県史上初の方だそう)謝花昇(じゃはなのぼる)と、アイヌのところで出てきた、仙台藩出身で、脱藩後紀行家とでもいうべく世界に出ては、記録をつけたという玉蟲左太夫(たまむしさだゆう)の2人が印象に残りました。歴史に「もしも」はないけれど、「もしも」もっと長生きしていたら・・・と思いをはせました。つくづく、誰もが知っているような歴史上の人物ではなくても、聡明だったり、政治手腕が優れていたりして世の役にたち、重要な痕跡を残した人は、知らないだけでたくさんいるんだと思わされました。

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うり子
うり子

梨木香歩さんが綴る言葉は相変わらず、心に静かにしんしんと降り積もります。気持ちがくさくさしているときに読むと、落ち着けるので、いつも何かしらの梨木香歩作品が傍らにあります。

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