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「誰かとその人の生活について話をするのは楽しい。その人の生活を知ることは、その人の生き方、一つの人生の片鱗に触れさせてもらうこと」
いや、本当にそう。だから日記のようなエッセイを読んだり、人の家にお呼ばれしてお部屋を拝見させてもらったり、趣味や好きな本について聞いてみたりすることはワクワクするのだとしみじみ思いました。そしてそんな気持ちで本書も読ませていただきました。
本書はもともと手作りのZINEとして発行していたものを、書きおろしとともに再構成して出版したものとのこと。手作りのZINEとしては異例の大ヒットだったとか。自称「趣味読書」の私ですが、手作りのZINEなるものを入手する術も知らないので、なんかこう読書好きのための深い世界があるのだな~と興味深く感じました。
本書に書かれていることは、生活改善運動としてあれを捨てて、こんなに良いものを買って、健康のために〇〇を始めて、自炊ではこんなものを作るようになりました!といった、SNSでの投稿で済んでしまいそうな、「生活改善運動」という言葉の表面をさらっとなぞっただけのものではありません。多忙で生活空間が乱れて生活が乱れてもなお、「生活改善運動」を意識し、その意識がゆえにもんもんとする様子も隠すことなく書かれていて、とても親近感が湧きます。
(自分にしっくりくる本棚がなかったからDIYで作ってみる、自分が心地よいと思う生地から洋服を手作りしてしまう、といった、すぐには真似できなさそうなことも淡々とこなしていく姿はまぶしかったですが・・・)
まず、住む町を選ぶところで、著者は友人からこんな言葉を投げかけられます。
「そのまちでクリエイティブな気持ちになれるかどうかだと思うんだよね」
この友人の方はアーティストのようなのですが、利便性より何より「クリエイティブ」という言葉が出てくるところに、ちょっと衝撃的でした。何かを作り出す=クリエイティブな行動が一切ないなーと自分の生活を顧みると、もしかしたら、自分が思っている以上に、大量生産されたものをポンポン買っては消費してという生活に無意識に陥っているのかも、と思い至りました。それが良い悪いという判断の前に、自分はそれでいいのかと問われたら、答えは「ノー」。だとしたら、私も「生活改善運動」を始めてみる時がきたのかもしれません。そう思って本書を読むと参考になる考え方がたくさん詰まっていました。本書にも出てきましたが、「暮らしの手帳」が創刊された理念として、一人ひとりが自分の暮らしを大切にすることを通じて、戦争のない平和な世の中にしたいという思いがあったということは、「暮らしの手帳」を一度でも手に取ったことのある方は知っているかもしれません。そんなことも思い出しつつ本書を読み進めると、自分の価値観で彩っていく「生活」の尊さを改めて感じました。
基準は自分の快・不快。自分なりの「生活改善運動」をやってみよう、そして著者のように、ひとの日常、ひとの営みが軽視される日々にあらがってみよう、と前向きになれる読後感でした。
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作者には「生活改善運動」のメンターとなる人や、背中を押してくれる良い友人たちがいることも印象に残りました。お互いの生活を良くしあっていくというかなんというか、こういう人間関係って素敵ですね~!(なんせ私は友達がいない・・・基本引きこもり・・・)
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