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西国分寺でクルミドコーヒーというカフェを経営する影山知明さんの本。
「経済を目的とすると、人が手段になる」ー
資本主義の恩恵にあずかり、資本主義の経済社会で良いと思いつつも、なんだか息の詰まる社会、なんだか幸せを感じにくい働き方・・・・こんなことを漠然と感じている人も多いと思いますが、そういったものに著者なりの考えというか理論が展開され、著者なりのひとつの解にいきついている本でした。
影山さんのこともそのカフェのことも全く知らずに読み始めたのですが、「ん?」と思って著者のプロフィールを読んで納得。やっぱり、こういう難しいことを論理的に考えて言語化できる方は違います。東大ご出身とのこと。やっぱり何か違う、私には到底考えられない難しいことを考えてらっしゃると思う方は、やはり賢い。
例えばお店とお客さんの関係を、TAKEの関係(利用する関係性)でなはなく、GIVEの関係(支援する関係)にすることで、著者が疑問に感じているような経済社会が変わっていくのではないか、という提案が主軸だったと思います。
それには、「特定多数」との直接的なコミュニケーションが必要と主張されていたり、また著者のカフェでポイントカードを発行しない理由を、お客さんの「消費者的な人格」を刺激しないため、といった説明をされていて、う~んと唸ってしまいました。
また、対価を不等価にして、より多く受け取った側に贈る気持ちを維持してもらい、それによってさらなる交換をうむということを継続的にしていくことの可能性については、ついつい対価は等しくないと安易に思っていたので、目から鱗でした。それに関連して、日本にチップが普及しない理由を、限られた国土と絡めて説明されていたのも納得といったところでした。
「世の中で大事なものはお金つまり金銭的な価値だけではないはずなのに、金銭的な価値の追求に収斂してしまった経済のありようが人間を手段化し、時間を手段化し、結果生きづらさを生み、人間の可能性が発現する機会すら奪っている。」という言葉には、未来に対する不安が頭をもたげましたが、これに対する著者なりのひとつの解(仮説)が以下です。
”ビジネスの目的、動機を「ギブすること」にする。かけるべき時間をちゃんとかけ、かけるべき手間ひまをちゃんとかけ、いい仕事をする。そしてその仕事を丁寧に受け手に届け、コール&レスポンスで時間をかけて関係を育てる。つまり、「贈る」ことを仕事の目的にする。”
(「コール&レスポンス」という言葉は、傑作といわれる作品が今後うまれないのではないかと危惧している章でも使用されていて、ここも読みごたえがありました。)
理想論で実現不可だと指摘されそうだと著者自身も述べられていますが、だとしてもその理想を自分の足元、自分のお店、自分の地域から始めてみなければせっかくの考えも具現化しないし、何も変わらない、変わることができません。ある意味、一昔前の消費社会に戻るというような側面もあるように感じたので、情報量が桁違いで、変化のスピードが著しい今の社会で、この影山さんの仮説がどこまで実現できるのか、非常に興味深いです。
暮らしに密着した消費生活や働くといったことに対して、ふと足を止めてじっくり考えてみるきっかけになる良本でした。
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自分の考えをこうやって理論的に説明できることも本当にすごいな〜と思いますが、それ以前にこういった考えを構築できることに尊敬の念を抱きます。「成績が良い」ではなく本当に「頭が良い」人になりたいし、なれるように今からでも努力しなきゃと思いました。

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